犬を2頭以上同時に飼う「多頭飼い」を検討している飼い主さんも多いと思います。好きな犬種が2種類以上いる場合や、同じ犬種を2頭以上飼いたい場合など理由はさまざまです。
しかし、多頭飼いする際には気をつけなければいけないポイントがいくつかあります。多頭飼いに向いていない犬の特徴や失敗しやすい事例、向いていない犬種・向いている犬種まで紹介します。
多頭飼いに向かない犬の特徴とは?
犬は群れで生活することもあるため、一見すると多頭飼いに向いているように思えますが、向いていない場合も数多くあります。気をつけないと先住犬のストレスを感じてしまう原因にもなってしまうので、次の5つの特徴に該当する場合には多頭飼いを避けるようにしましょう。
- 攻撃的な性格の犬
- 警戒心が強い犬
- 臆病な性格の犬
- 甘えん坊な性格の犬
- 吠え癖、咬み癖などがある犬
攻撃的な性格の犬
攻撃的だったり、興奮しやすい子は多頭飼いに向いていません。特に家の中という閉鎖された空間では後住犬に対しても吠えたり攻撃してしまう可能性が高まります。止めに入る飼い主に対して攻撃してしまうケースもあるため、多頭飼いは避けましょう。
また、一般的に「闘犬」と呼ばれる土佐闘犬やピットブル、ボクサー犬などは闘争本能が高いため、多頭飼いには向いていません。
警戒心が強い犬
警戒心が強い犬も多頭飼いには向いていません。縄張り意識が強いため、特に慣れていない時期は他の犬と同じ空間で一緒に暮らすことに対して、ストレスを感じやすいと言われます。
臆病な性格の犬
臆病な性格の犬も多頭飼いには向いていません。後から他の犬が来ることによってストレスを感じ、落ち着きがなくなることがあります。他犬との触れ合いが苦手だったり、神経質な子もいるため、注意しましょう。
甘えん坊な性格の犬
甘えん坊な性格の犬も多頭飼いには向いていません。飼い主への依存度が高いため独占欲が強く、後から来た犬に対して急に攻撃的になってしまうことがあります。トライアル期間などを設けられる場合は慎重に先住犬の様子を伺いしましょう。
吠え癖、咬み癖などがある犬
吠え癖や咬み癖があるワンちゃんも多頭飼いには向かないです。住環境が変わることで、先住犬は少なからずストレスを感じることになるため、吠え癖や咬み癖がエスカレートする可能性があります。
また、ふとした拍子に興奮して咬み付いてしまうと、ケガをさせたり、関係性が再構築できないほど悪くなる可能性があります。その場合、ケンカの回数が増え、怪我やストレスによる体調悪化を引き起こすこともあるため、注意しましょう。
多頭飼いで失敗しやすい実例
多頭飼いをする際に失敗しやすい犬の組み合わせがあります。
- 年齢が近すぎる
- 年齢が離れすぎている
- 先住犬のしつけがきちんとできていない
- 後住犬を優先してしまう
- 体格差がありすぎる
多頭飼いに向かない犬の特徴に当てはまらなくても、こういった5つのケースは失敗しやすいので、しっかり確認するようにしましょう。
年齢が近すぎる
2頭以上飼う際に、犬の年齢が近すぎるのはおすすめできません。なぜなら、病気や寿命が同じ時期になることで介護の時期が重なって負担が増えたり、片方の犬が亡くなったときに、もう片方の犬も強く影響を受けてしまう可能性があるためです。性格によっては、序列競争にも発展し、ケンカしやすくなることもあります。
年齢は3〜5歳程度離れていることが望ましいと言われます。
年齢が離れすぎている
多頭飼育をする際には、年齢差が離れすぎている場合もおすすめできません。年齢が5歳以上離れている2頭を飼育する場合、片方の若齢犬はエネルギーが有り余る一方で、もう片方のシニア犬は同居犬との関係性にストレスを溜めてしまうことがあります。
恒常的にストレスを感じることで病気を発症する場合もあります。老犬と子犬では体力や活動量が違うため、多頭飼育の際には住環境や散歩のタイミングを分けてあげるなどの配慮が必要となります。
先住犬のしつけがきちんとできていない
先住犬のしつけがきちんとできていない状態で多頭飼いをしようとする場合、飼い主が制御できずに思わぬ事故につながることがあります。
例えば、すぐ吠える、すぐに咬むといった状態ではお互い興奮してケンカにつながってしまいます。また、トイレトレーニングなどの基本的なしつけが不十分だと、後住犬がそれを真似してしまう場合もあります。
そのため、必ず事前に先住犬のしつけをしっかりした状態で新しい子を迎えるようにしましょう。
後住犬を優先してしまう
先に飼い主との関係性を築いていたのに、後住犬ばかりに構ってしまうと先住犬のストレスにつながることもあります。
後住犬は先住犬の真似をすることがあるため、飼い主と先住犬が積極的にコミュニケーションを取り、後住犬に対してお手本を示せるように接してあげることが重要です。
体格差がありすぎる
体格差がありすぎる多頭飼いも、あまりおすすめはできません。これは、体格差による意図しない事故が発生する可能性があるためであり、身体の大きなワンちゃんはじゃれてるつもりでも事故につながることがあります。
例えば、チワワやマルチーズなどの体格が小さい犬と、ゴールデン・レトリーバーをはじめとする身体の大きい犬種などの組み合わせは避けた方がいいでしょう。
多頭飼いに向かない犬種
一般的な特徴に基づいて、多頭飼いに向かない犬種を具体的に紹介します。
その子の性格や、飼い主さんのしつけや社会化次第では、上手くやっていける子もいます。
柴犬
柴犬は自立心が強く、保守的かつ防衛心も強いことからあまり多頭飼いには向かない犬種とされています。頑固で警戒心が強い一面もあるため、可能であれば多頭飼いは避けた方がいいでしょう。
もし多頭飼いをする場合は、同犬種にしたり、去勢を済ませた異性同士の組合せにすることをおすすめします。
ミニチュアシュナウザー
ミニチュアシュナウザーは飼い主に従順ですが、縄張り意識が強く頑固な一面があります。互いを意識してストレスを感じてしまうことがあるため、多頭飼いに向いていません。
ミニチュアピンシャー
ミニチュアピンシャーは狩猟犬として活躍していたこともあり、番犬にもなるほど勇敢です。一方で、警戒心が強く、神経質な子もいるため、多頭飼いには向いていないとされます。
狩猟犬の本能から、小型動物の動きに反応して急に興奮する場合もあるため、同時に散歩に連れていくのも一苦労です。なるべく多頭飼いは避けることをおすすめします。
ペキニーズ
ペキニーズは比較的おとなしく、落ち着いた犬種ですが実は多頭飼いに向かないとされています。これは、その愛情深さが飼い主の独占欲につながり、他の犬へ攻撃してしまうことにもつながりかねないからです。
マイペースな性格でもあるため、多頭飼育をする際には、住環境を別々にして各々の時間やスペースを確保するなどの配慮をするようにしましょう。
多頭飼いに向いている犬種は?
多頭飼いに向いている犬種は、社交的な性格か人懐っこい性格の犬です。
具体例を挙げると、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーといったレトリーバー種は多頭飼いに向いています。性格が穏やかなことに加え、人間と協調した作業が得意なこともあり、多頭飼いでの生活に慣れてくれるでしょう。
そのほかにも、温厚で知能が高いボーダーコリー、飼い主に忠実で社交的な性格のトイプードル、賢くて利口で順応性が高いダックスフンドなどが多頭飼いに向いている犬種として挙げられます。
人に対しては友好的な犬種は数多く存在していますが、他の犬に対しては警戒心が強い犬種も多いため気をつけましょう。
多頭飼いをする際の注意点
2頭目のワンちゃんを迎えたあとに、気をつけるべきポイントがあります。特に以下4つのポイントが問題ないか、飼い主の目でしっかり確認しましょう。
- ストレスが溜まっていないか
- 日々のケアが不十分になっていないか
- 金銭面で負担になっていないか
- 災害時への備えを行っているか
ストレスが溜まっていないか
新しいワンちゃんを迎えた際には、先住犬のストレスには十分注意しましょう。
相性や住環境の問題で、ストレスを溜めてしまう場合があります。体調不良につながることもあるため、先住犬の様子は注意して見守ることが重要です。
逆に、お互いの関係性が良好な場合は、ストレス解消につながることもあります。良い関係性が保てる環境作り(寝床や給餌場所を分けるなど)にも注意を払うようにしましょう。
日々のケアが不十分になっていないか
犬の数が1頭から2頭になる場合、触れ合える時間やケアに割ける時間が少なくなりがちです。
例えば、ブラッシングや歯磨きの時間は倍になり、散歩を分けなければいけない場合は、1日の散歩時間も倍になります。特に、子犬を後住犬として受け入れる場合、しつけやトレーニングなどに時間を取られてしまいます。
飼育の手順が増えることで、気づかないうちに日々のケアが不十分になっていないか、常に確認するようにしましょう。
金銭面で負担になっていないか
多頭飼いをする際の注意点には、金銭面も挙げられます。事前に確認することも必須ですが、迎えた後の思いがけない出費にも注意が必要です。
日々のごはん代やトリミング代、トイレシーツ代などが倍になるだけでなく、病気の際の治療費が予期せぬ負担になる場合もあります。
災害時への備えを行っているか
災害が起きて避難するとき、2頭以上の犬を連れて避難するのは、1頭連れよりもはるかに大変です。特に徒歩避難が必要な際は、自分の安全も確保しつつ、2頭以上のワンちゃんを連れて、自らの足で避難しなければなりません。
避難所に到着すると、盲導犬・介助犬・聴導犬は人と一緒の避難スペースに入りますが、基本的に犬は飼養スペースに隔離されることになります。他の犬もいるため、基本的にはあらかじめ持参した開閉可能な可搬型クレートに入れておけることが条件となります。
災害時にも安全に犬を運べる犬用のクレートはこちらの記事で紹介しています。災害時にもすぐに持参できるように、普段から玄関ドアの近くなどに置いておくようにしましょう。
多頭飼い、悩んだときには獣医やトレーナーに相談を
多頭飼育は、上手くいけば後住犬のしつけの円滑化や留守中のストレス緩和、社会性の習得などメリットもあります。一方で、事前・事後の注意点や、基本的に不向きな犬種もいます。
多頭飼育をする際には、なるべく事前にプロのドッグ・トレーナーに先住犬のしつけや適性などについて、相談するようにしましょう。