
正式名称 | パピヨン |
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英語名 | Papillon |
原産国 | ベルギー・フランス・スペイン |
カテゴリ | 小型犬 |
ズバリ一言 |
パピヨンはフランス語で「蝶」 立ち耳と光沢のある飾り毛が 蝶のように美しい子たちです |
記事内容 |
パピヨンの飼い方のコツや、 病気の例などを紹介します🐶 |
パピヨンの特徴
パピヨン(英語名:Papillon)は、小顔で潤んだ瞳と大きな立ち耳、長い飾り毛が特徴です。特に被毛はまっすぐで柔らかく、絹のような光沢があります。
パピヨンはフランス語で「蝶」を意味します。その名の通り、パピヨンを後ろから見ると、大きな耳に美しい被毛がひらひらと蝶のように舞って見えます。
愛らしく優雅な見た目だけでなく、実は大変頭もよく、物覚えが良い犬種です。さらに、小さな身体ですが、エネルギッシュに素早く動き回ることができ、ドッグスポーツも得意です。
犬種標準のサイズ | 体高 20~28cm |
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体重 | 4.0~4.5kg |
分類 | 小型犬 |
平均寿命 | 13年~15年 |
価格相場 | 20万〜40万円 ※1 |
※1 参考:オンラインペットショップ等複数社の値段から算出 2021年9月inuteマガジン編集部調べ
パピヨンは小型犬のため、長期旅行などの際には、専用のキャリーバッグっで持ち運ぶ事ができます。物覚えがよく、しつけもしやすいため、無駄吠えがなければ公共交通の同伴利用も可能です。
本犬種と似た特徴を持つ犬種を3種について、ご紹介します。
なお、パピヨンの原型は、スペインのスパニエル犬と言われています。スパニエル犬には、キャバリアや、ペキニーズなどの犬種が挙げられます。
パピヨンの毛色
パーティーカラー(2色)とトライカラー(3色)で分かれます。ベースはホワイトで、ブラウン系(セーブル、レッド、ブラウン)からブラックの色が入ります。
また、子犬から成犬になるにつれて、毛色が変化します。パーティーカラーがトライカラーになったり、濃いブラウン系の被毛が明るくなったりします。その子に特有の変化を見守ってあげましょう。
パピヨンの性格
とても明るい性格で、家族や他の人や犬に対しても友好的です。とても賢く、物覚えが良いため、社会化やしつけは入りやすい傾向にあります。
ただ、驚いたときなどのリアクションが大きかったり、興奮しやすい子もいます。子犬の頃からの社会化は意識的に行うようにしましょう。
パピヨンの飼い方
華奢な身体ですが、運動が得意でエネルギッシュな犬種です。社会化や外気浴も兼ねて、毎日2回、各30分程度の散歩に行くようにしましょう。
飼育にあたっては、やはりその美しい被毛のお手入れは不可欠です。後述するお手入れを参照し、こまめにケアしてあげましょう。
パピヨンのしつけ
頭がよく物覚えが良いため、しつけは入りやすいと言われます。びっくりしやすかったり興奮しやすい子もいますので、子犬の頃から意識的に散歩に連れ出し、周囲の環境に適応(社会化)させましょう。
散歩の中でも、特に他の人や犬と挨拶をさせたり、一緒に散歩するようにしてあげることで、周囲の人や犬に慣れさせてあげましょう。
ただし、他の犬への挨拶では、一方的に犬を近づけてはいけません。相手が驚いて攻撃してきたり、逆に自分が興奮することで、最悪の場合、咬傷やその他事故につながります。
必ず事前に相手の飼い主に声をかけ、挨拶させても良いことを確認しましょう。そのうえで両者が注意してゆっくり犬を近づけ、挨拶をさせます。
このとき、どちらかがうなり声をあげたり、嫌がる場合はすぐに距離を取るようにしましょう。
パピヨンのお手入れ
下記の頻度を目安にお手入れしてあげるようにしましょう。
ブラッシング | 1日1回 |
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シャンプー | 毎月1回 |
トリミング | 基本的に不要 |
ブラッシング
被毛が長くて絡まりやすいため、散歩の後などに毎日ブラッシングしてあげましょう。
パピヨンの被毛や肌はとてもデリケートなので、十分に注意しましょう。スリッカーブラシなどは避け、コームで全体を整えた後、ピンブラシで優しく仕上げます。
特に耳の飾り毛が絡まった場合は、まずは人の手でほぐしてからコームでとくようにします。犬用ローションなどを使うとよりほぐしやすくなるため、常備しておくと良いでしょう。
ブラッシングのとき、目元に付着した涙もコットンなどで優しく拭き取りましょう。涙から雑菌が繁殖し、皮膚の炎症や被毛の変色が起こる場合があります。
シャンプー
シャンプーは、月に1回を目安にしましょう。溜め込んだ汚れを落とし、雑菌の繁殖を防ぐことで、肌トラブルやニオイの対策になります。
シャンプーの主な注意事項は下記のとおりです。
水温🚿 | 37~38℃が適切です。 |
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薬剤🧴 | 必ず犬専用のものを! |
乾燥💨 | 毛の根元まで入念に! |
シャワーする際には、水温は37℃程度に設定して、弱めの水流でゆっくり流します。シャンプーの薬剤は、必ず犬専用の低刺激性シャンプーを利用しましょう。
パピヨンは顔周りが被毛が長く、汚れが付着しやすいです。目元や口元の汚れには注意して、優しく拭き取ってあげましょう。
シャンプー後は、必ず毛の根元からしっかりと水気を取りましょう。タオルドライのあとにドライヤーで乾かすようにします。
トリミング
パピヨンは被毛が伸びにくいため、トリミングは不要です。ただ、足先周りや飾り毛が伸びてきたり、美容観点でスタイルを変えたい場合にはカットに連れて行くこともできます。
また、飼い主のシャンプーに不安がある場合には、サロンでシャンプーだけお願いすることもできます。
その他
耳掃除
耳掃除は、月に1~2回しましょう。耳が大きく、飾り毛もあって汚れを取り込みやすいです。周囲の被毛も合わせて、定期的にキレイにしましょう。
耳掃除には、犬専用のイヤークリーナーなどをコットンや脱脂綿に染み込ませて利用します。目立つ汚れには、耳掃除用シートも利用できます。肌を傷つけないよう優しく触れる程度にケアしましょう。
歯磨き
パピヨンは他の犬種と比べても長寿の子が多いため、継続的に歯のケアをして虫歯や歯周病などを予防する必要があります。
夕食後や寝る前などに、飼い主が毎日歯磨きをしてあげましょう。
歯磨きには、小型犬用の歯ブラシを利用しますが、人間の子ども用歯ブラシや指に巻いたガーゼなどでも代用できます。犬専用歯磨きジェルなども利用しながら、効果的に歯垢を落としましょう。
パピヨンがかかりやすい病気の例
本犬種は、膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)、骨折(こっせつ)・脱臼(だっきゅう)、眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)、白内障(はくないしょう)、進行性網膜萎縮(しんこうせいもうまくいしゅく)、小乳頭症(しょうにゅうとうしょう)に注意しましょう。
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
本疾患は、膝のお皿の骨(膝蓋骨)を受ける溝(大腿骨滑車)が生まれつき浅いことなどが原因で、膝蓋骨に動揺または脱臼がみられるものです。特に内側への脱臼が多いとされます。
発症した場合、生活に支障が出ていなければ運動制限・体重の減量・生活環境の改善などの保存療法で経過をみていきます。
しかし、下記のような症状が見られる場合は、外科手術が適応されます。
- 脱臼による跛行が重度
- 強い痛みをともなう
- 成長期に脱臼が進行
- 可動域が減少
また、外科手術も必ず治るわけではなく、術後のケアも重要となります。
骨折(こっせつ)・脱臼(だっきゅう)
パピヨンは活動性が高いこともあり、「高所からの転落」や「足元での踏みつけ」などの外的要因による骨折・脱臼で来られる患者さんが多く見受けられます。
予防のためには、生活と遊びの区別をつけさせるしつけや、不動化できるコマンド(オスワリ!・マテ!など)を覚えさせることで、不慮の事故を防ぐことが期待できます。
眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)
本疾患の原因はさまざまで、先天的な眼瞼の形成不全によるものや、眼球への刺激による眼瞼痙攣(痛みなどによりピクピクすること)によって起こるものなどがあります。
パピヨンは、特に眼瞼の内反を起こしやすいとされています。それにともなう流涙症(涙やけ)や眼球への色素沈着・角結膜炎などの症状を示します。
内反症が重度の場合は、一時的な眼瞼形成処置(タッキング法)により治療を試みます。しかし、治療への反応が乏しい、または再発する場合は、外科的に整復することもあります。
白内障(はくないしょう)
眼内の水晶体(レンズ)が白く濁る事を白内障と言います。
パピヨンは白内障の好発犬種として知られており、発症の時期や程度は各々で異なります。
白内障は白濁による視覚低下に加え、進行にともなう「水晶体起因性ぶどう膜炎」という炎症を引き起こすため注意が必要です。この炎症により、緑内障・網膜剥離・水晶体脱臼など様々な病態を誘発します。
愛犬の瞳の中が白くなってきたなと感じたら、動物病院へ受診するようにしましょう。
進行性網膜萎縮
(しんこうせいもうまくいしゅく)
本疾患は、光を感じ取る網膜の遺伝性疾患で、数カ月から数年をかけて徐々に視覚が低下します。
パピヨンは本疾患の好発犬種として知られています。若齢期(3-5歳ほど)に眼検査で所見の変化がみられることがあります。ただ、普段の診察では網膜検査まで行われることは少なく、発見が遅れるケースが多いです。
本疾患は有効な治療法がありません。発症した際は、進行抑制を期待して抗酸化作用のサプリメントを使用していくことが多いです。また、前述の「白内障」を誘発するため、定期的な眼内検査も必要となります。
初期症状として、夜盲症(暗闇で見づらくなる)が見られることが多いです。夕方の散歩や消灯後にだけ物にぶつかる様子があった際には、動物病院に相談しましょう。
小乳頭症(しょうにゅうとうしょう)
眼球奥に光を感じる網膜という臓器があります。そこで光から電気刺激に変換された信号は「視神経乳頭」という部分に集まり、脳へと繋がっていきます。
パピヨンは、稀に視神経乳頭の形成不全がみられます。片眼だけの場合もあれば両眼にみられる場合もあります。その機能が低下・消失している場合もあり、注意が必要です。
遺伝性の疾患のため、有効な治療法はありません。発症した際は、まず周囲の生活環境を整えることで、生活に不自由がないように工夫することが必要になります。
特に若齢期から眼が見えづらい様子(物にぶつかる・目線が合わないなど)がみられた際には、動物病院へ相談してみましょう。
パピヨンの価格
購入価格 | 20万〜40万円 ※2 |
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月間飼育費用(医療費含む) | 平均13,815円(小型犬 n=308) ※3 |
※2 参考:オンラインペットショップ等複数社の値段から算出 2022年5月inuteマガジン編集部調べ
※3 出典:「令和3年(2021年)全国犬猫飼育実態調査」一般社団法人ペットフード協会
パピヨンの歴史
パピヨンは、スペインの小型スパニエル犬が祖先と言われており、16世紀頃、改良が加えられた後に今の姿になりました。ルイ16世王妃マリー・アントワネットをはじめ、当時の貴婦人の間ではとても人気でした。
当時は、自分の肖像画にパピヨンを一緒に描くことがブームになっていました。マリー・アントワネットの母で、オーストリア唯一の女帝、マリア・テレジアの肖像画に描かれたことでも有名です。
当初は、まだパピヨンという名称はなく、スカーレル(リス)・ドッグ、スカーレル・スパニエルなどと呼ばれていたそうです。当時は垂れ耳タイプ(現在のファーレン)が多く生まれていたようです。
現在の立ち耳タイプの小型パピヨンは、立ち耳のスピッツ種や小型犬種のチワワと交配されて誕生したとされます。18世紀末頃からの選択交配により増えていき、19世紀にはフランスやイタリア、ベルギーでも繁殖されました。
参照文献
No. | タイトル | 出版社 | 著者・監修 |
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1 | 「世界の犬種大図鑑」 | 誠文堂新光社 | 藤田りか子(著) |
2 | 「いちばんよくわかる犬種図鑑 日本と世界の350種」 | メイツ出版 | 奥田香代(監修) |
3 | 「日本と世界の犬のカタログ」 | 成美堂出版 | 福山貴昭(監修) |